子宮外妊娠の治療内容

子宮外妊娠は、気づかずに経過すると急性腹症や出血性ショックを引き起こす産婦人科緊急性疾患の一つです。
子宮外妊娠は妊娠5~6週くらいでは症状はほとんどないことが多いため、気づくのが遅れることがあります。したがって、妊娠した場合や生理が遅れて妊娠の可能性のある場合は、早めに医療機関を受診して、妊娠週数と妊娠状態を調べてもらうことが大切です。
早期に診断できればより 適切な処置や治療をすることができます。

目次

子宮外妊娠の主な治療法と発症部位

子宮外妊娠の主な治療法には、【待機療法】、【手術療法】、【薬物療法】、があります。妊娠の状態によって治療法は変わってきます。
お体の状態や今後の挙児希望などを総合的に判断して、どの治療方法で進めていくべきか、主治医の先生とよく相談しながら決めていく必要があります。

正常妊娠、異所性妊娠、子宮外妊娠とは

正常妊娠とは受精卵が正常な子宮内膜に着床した妊娠のことをいいます。
異所性妊娠とは受精卵が正常な子宮内膜以外に着床した妊娠のことをいいます。
子宮外妊娠とは受精卵が子宮外に着床した妊娠のことをいいます。
異所性妊娠には子宮内の異所性妊娠と子宮外の異所性妊娠があり、98%以上は子宮外異所性妊娠即ち子宮外妊娠となります。
英語論文におけるectopic pregnancyの日本語訳では異所性妊娠となりますが、異所性妊娠の多くが子宮外の異所性妊娠であることと、わかりやすさから日本では子宮外妊娠という用語が使用されることが多いです。

正常妊娠(正所性妊娠) 99%正常な子宮内膜に妊娠
異所性妊娠 1%子宮内の異所性妊娠 2%
子宮外の異所性妊娠(子宮外妊娠) 98%

[注] 子宮外妊娠の原因

受精卵が着床する可能性のある部位

  1. 正常妊娠(正所性妊娠)
  2. 子宮頸管妊娠
  3. 帝王切開瘢痕部妊娠
  4. 子宮筋層内妊娠
  5. 卵管間質部妊娠
  6. 卵管峡部妊娠
  7. 卵管膨大部妊娠
  8. 卵管采妊娠
  9. 卵巣妊娠
  10. 腹膜妊娠 ・正常妊娠は、➀のみ、
    • 異所性妊娠は、②~⑩
    • 子宮内異所性妊娠は、②~⑤
    • 子宮外異所性妊娠(子宮外妊娠)は、⑥~⑩
  11. 異所性妊娠の診断は尿検査、血液検査と超音波検査に症状を合わせて行われます。

子宮外妊娠の主な治療法

子宮外妊娠の主な治療方法は大きく分けて、待機療法、手術療法、薬物療法、の3つがあります。実際にはその3つを組み合わせて行われることもあります。次章より詳細に解説いたします。

[注]子宮外妊娠、異所性妊娠の症状と治療

【待機療法】子宮外妊娠の治療のイメージ 

子宮外妊娠の検査と診断

全妊娠の内、約1%で異所性妊娠が生じ、異所性妊娠のうち約98%が卵管内の子宮外妊娠といわれています。
尿検査で妊娠反応陽性なのに超音波検査では子宮内に胎嚢が見えない時は、次の3つの場合が考えられます。
1、正常妊娠だが妊娠週数が小さいために見えない場合
2、すでに流産していて見えない場合。
3、子宮外妊娠のため子宮内に胎嚢がみえない場合。
の3つの場合があります。
確定するためには、血中HCG検査と超音波検査で1~2週間経過観察をすることが必要です。
待機した結果、胎嚢が子宮内に見えてきて胎芽の成長が確認されれば正常妊娠となります。
血中HCGがだんだん減少して、子宮内に胎嚢が見えない時は、流産の可能性が高くなるので、自然流産するのを待機します。
血中HCGが増加しているのに、子宮内に胎嚢が確認できない時は、子宮外妊娠を疑います。
待機することによって、正常妊娠、流産、子宮外妊娠、を確定します。
[略語] HCG: ヒト絨毛性ゴナドトロピンhuman Chorionic Gonadotropin

子宮外妊娠の待機療法

子宮外妊娠の診断後、自然流産した場合は定期的にhCG検査を行い、その値が継続して低下を続けている場合は慎重に経過観察しそのまま自然に吸収されるのを待ちます。待機療法で治療をするには、hCGの値、病巣の大きさ、未破裂、全身状態が良好であるなどの一定の条件を満たす必要があります。万が一急変して手術が必要になった場合に、緊急で外科的手術に対応できる環境でのみ選択肢となる方法です。hCG測定などの経過観察には厳重な管理が必要で、手術療法などに比べて治療が長期にわたることがあります。

[注] 子宮外妊娠とは

【手術療法】子宮外妊娠の治療のイメージ

子宮外妊娠のほとんどは卵管や卵管膨大部で起こります。子宮外妊娠の初期症状は軽い腹痛程度ですが、卵管内に着床した受精卵が成長を続けると、卵管破裂を引き起こし急性腹症、大量出血のリスクとなります。卵管破裂の前に、早期発見して妊娠している部分を取り除く必要性があります。
卵管内の胎芽等の摘出には、卵管を温存する卵管温存法と卵管を温存しない卵管摘出法があります。
卵管温存法とは、卵管を切開して妊娠している部分だけを取り除き、卵管そのものは残しておく方法です。この方法で手術を行うと、左右の卵管が残ることになり卵管温存術となりますが、欠点として手術を行なった方の卵管は将来的に癒着を起こし、次の妊娠でも子宮外妊娠となるリスクが高まります。また、追加で薬物療法や再手術になる可能性もあります。
卵管摘出法は、妊娠している部分の卵管を切除する方法です。手術時間が短く根治術となります。卵管は左右にあるので、手術しなかった方の卵管は残り、残った卵管に異常がなければ、次回の妊娠で自然妊娠が期待できます。また現在では体外受精・胚移植が広く普及しているので卵管性の不妊に体外受精は適応されます。
卵管を温存する方法が良いか、切除する方法がよいかは患者様のお体の状況などによって異なります。手術中に腹腔内の状態を見て、温存から切除に方針が変更されることもあり、主治医の先生とよく相談、検討することが大切です。
次回の妊娠でも子宮外妊娠が起こる可能性が高くなりますので、手術療法を受けた方が次回の妊娠で挙児希望の場合は、子宮卵管造影の検査を受けて卵管の状態を確認しておくことがおすすめです。
現在では腹腔鏡下で卵管切除術の手術療法が主流となっています。受精卵の着床部位がわかれば、その部位を摘出することで根治療法となります。

[注] 子宮外妊娠、異所性妊娠の症状と治療

【薬物療法】子宮外妊娠の治療のイメージ

妊娠している場所が不明の場合や血中HCG値の低下が遅い場合に適応されます。
薬物療法は、hCGの値、全身状態が良好である、病巣の大きさ、未破裂、などの条件を満たしていている場合に治療の選択肢の1つになります。
卵管に傷をつけずに治療を行うことができ、機能温存を望む患者様に対して、担当医とよく相談して選択されることが必要です。治療に必要な期間は手術に比べて長期にわたります。
薬物療法の方法は、メソトレキセート(MTX)というお薬を全身投与または局所注射を行い、妊娠組織を消滅させます。メトトレキセートというお薬は抗がん剤の一種です。
投与の方法は、複数回投与法と単回投与法があります。投与後はhCGの値を定期的に計測し、順調に下がっていけば治療が成功したと言えます。しかし、投与後にhCG値の急激な上昇があった場合、再投与や手術が必要になる場合もあるため、急変した場合などに緊急で外科的手術を行える施設でのみ選択が可能な治療法です。

[注]子宮外妊娠の治療 

異所性妊娠の症状と検査、原因、早期発見・早期治療

異所性妊娠の症状と検査

妊娠5週~6週くらいの初期妊娠では、軽いお腹の生理痛様痛み、少量の不正出血、悪阻(つわり)以外の症状がほとんどないことが多いです。妊娠が疑われる場合は、病院やクリニックのエコー検査で妊娠週数と妊娠状態を調べることが大切です。
妊娠検査で陽性反応が出た方、妊娠している可能性のある方で不正性器出血や月経不順、下腹部の痛みなどの症状がある場合は、なるべく早く産婦人科医院を受診して、hCG検査、超音波検査の詳しい検査を受けることをおすすめします。

異所性妊娠の原因

異所性妊娠の原因の多くは、受精卵の移送障害と着床障害です。
排卵して受精した受精卵の移送障害として、クラミジア感染症、子宮内膜症、喫煙歴、既往の卵管形成術、があります。卵管内膜に炎症を起こして癒着を生じ移送障害となります。
受精卵の着床障害として、筋腫核出術後、帝王切開分娩、体外受精、喫煙習慣、等があります。近年、帝王切開によって出産する女性が増えたため、帝王切開瘢痕部妊娠にも注意が必要です。
子宮外妊娠のほとんどは卵管内部で着床する卵管妊娠ですが、卵巣妊娠、子宮頸管妊娠、腹膜妊娠のいずれの妊娠も、正常な子宮内膜以外に着床した場合、赤ちゃんが育つことはできません。
卵管妊娠は血管が豊富なため大量の不正出血には注意が必要です。

早期発見、早期治療

子宮外妊娠は、予知予防が難しい病気ですので、早期発見・早期治療が非常に重要です。子宮外妊娠の治療法は、未破裂の場合には待機療法、手術療法、薬物療法等のいくつかの治療法を組み合わせた選択肢があります。治療の方法は、お体の状況や今後の挙児希望なども含め、主治医の先生とよく相談して決めていくことが必要です。受診をご希望の方は、お電話か24時間受付可能なWEB予約からご予約をお願いいたします。
当院では、血液hCGの値や超音波検査の結果から、子宮外妊娠が強く疑われる患者様は腹腔鏡下手術のできる施設の整った高次病院へ紹介させて頂いております。

[注]子宮外妊娠の症状
[注]子宮外妊娠の原因

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